ゲーム

RPGの呪文と「有縁性」

名称が長い呪文ほど強い

 突然ですが、皆さんはRPGが好きですか?
 僕は結構ゲームが好きで、まとまった休みはこれ幸いと積みゲー崩しに勤しむことが多々あります。今年の冬休みもそれに違わず、色んなゲームをプレイしていました。また、他の人のプレイを傍から見るのも好きなので、弟のプレイを(野次を飛ばしながら)眺めていることもあります。

 岡目八目とはよく言ったもので、他人のプレイを傍観していると自分がプレイした時には気づかない些細なことが気になったりします。そのひとつが今回の本題、「RPGの呪文」に関するネーミングの規則にまつわる仮説です。ゲーム好きにとっては常識中の常識であって、もはや顧みることもないと思いますが、多くの場合「RPGの呪文」に一定の法則があることにはお気づきですか?

 それは───「名称が長い呪文ほど強い」です。繰り返しますが、ゲーマーにとってはごく自然に受容してきたことで、「何をいまさら」と思われるかもしれません。とはいえゲームを嗜まない読者のためにも、念のため説明しておきましょう。
 言わずと知れたRPGの代名詞、『ドラクエ』シリーズでは攻撃呪文が強さによって段階づけされており、それに伴い名称も変化していきます。例えば、炎の呪文を強さ順に並べると、

メラガイアー>メラゾーマ>メラミ>メラ

となっています。
 ちなみに、上記の弟がプレイしていたゲーム『ペルソナ5R』で登場する炎の呪文(作中では「スキル」と呼称)には、アギダイン>アギラオ>アギという種類があります。

 RPGとひとくちに言っても、世界中で膨大な数のゲームがあるので、全てのRPG呪文体系がそうであるとは口が裂けても言えませんが、少し考えただけでもこのような例は多く挙げられます。(ゲーマーの読者はぜひ類例を思い浮かべてみてください)

RPGの呪文名は言語学的に面白い

 ところで、なぜ僕が、このゲーマーにとっては常識とも言える「名称が長い呪文ほど強い」説を持ち出したかというと、この法則は言語学(とりわけ認知言語学)的に大変面白い素材だと思うからです。

 ソシュール以降の近代言語学では、「音と意味のつながりは恣意的」だと考えられてきました。これは極端に言えば、「特定の語(音の羅列)が特定の意味を表すようになったのは単なる偶然」ということです。しかし、比較的最近(とはいっても1970年代ごろからありますが)興った分野である認知言語学ではソシュール的な言語観に対し、「音と意味のつながりは有縁(=何かしらのつながりがある)」だと考えます。

 ちなみにその根拠としてよく挙げられるのは「オノマトペ」です。つまり、「特定のオノマトペがそういった音(発音)になるのは、人間の感覚にもとづいており、恣意的ではない」ということですね。例えば、「ころころ」という擬音語は「ころがる」という動詞と感覚的に関係がありそうですし、「ころころ」より「ごろごろ」が大きく感じるのも感覚的には自明な気がします。

 さて、話を戻しましょう。RPGの呪文では強さと名称の長さに相関性があるのではないか、というのが今回取り上げたテーマです。これは、強さと長さが感覚的に結びついて音の羅列と意味が有縁になった例と言えるでしょう。(音の羅列と言えば、RPGの呪文はファンタジー感を出すために、まさに“音の羅列”になっていることもしばしば)

 今回詳しくは触れませんが、先に挙げた『ドラクエ』シリーズの炎呪文「メラ」がオノマトペに由来しているだろうというのも、掘り下げていけばとても面白そうです。「RPGの呪文と有縁性」というテーマは意外と奥深そうですね。

ちなみに……

 ちなみに、今回のテーマは言語学で「音象徴」と呼ばれている概念と関係するものです。
 もう少し知りたいという方は、下の記事もぜひ読んでみてください!

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